解 説
学校を卒業して40年、英語を使う現実社会の中で悪戦苦闘しながら自分なりにつかみ
取ってきた道具としての「生きた英語」は、実は学校で習った英語とは似て非なるも
のだと感じていた。例えば現在完了の表現にしても「なんだ、こういう時にこういう
風に使うものなんだ。こりゃ学校の教え方ではわからんわ。」と思いながら自分の道
具としての英語に塗り替えてきた。実際には世界で15億人とも言われる人々がコミュ
ニケーションツールとして実際に使っている英語を生きた「立体」と例えるならば、
学校ではそれを単に薄っぺらな「平面」としてしかしか教えていないと言える。一般
的に見てこの「平面英語」は実際に現場ではとてもそのまま活用できるものではな
く、自分で「立体化」しようとしてもその拡張の方向性も何も教えられていないので
とんちんかんな拡張をして海外の人から誤解されたり笑われたりしてしまう。それの
みならずこの「平面英語」は生きていないので何ら面白味も魅力も感じられず、学校
でも英語嫌いの生徒が日々増産されていく。これが悲しい現実なのだ。
橋本氏の本著作を読んで、まさしく私が悪戦苦闘して得た「生きた英語」の何倍もの
事例が見事に一冊にまとめあげられていると感じると同時に、もっと早くこの著書が
出ていれば私もこんな苦労をしなくて済んだのにとの思いが湧き出てきた。彼もまた
豊富な社会経験と彼なりの洞察力で、学校で習った英語を本物の姿へと「立体化」し
たに違いない。彼はさらにその成果を世の人々に伝えることで、読者にいち早く学校
英語を脱ぎ捨てさせ、道具としての「立体英語」を正しく楽に身に着けてもらおうと
の強い思いがあったのだろう。
もう一つ感じたことは本著作を一人でも多くの学校での英語教育に携わる方々に読ん
で頂きたいという事である。いまから思うと、「なぜ学校ではこのポイントを明確に
教えてくれなかったのか?」「なぜこの違いに注目して分かり易く教えてくれなかっ
たのか?」という疑問が多々ある。私の推測ではあるが、おそらく英語教師を含む多
くの英語教育関係者が現場の生の英語、すなわち「立体英語」をつかむまでの現場体
験がないまま教育に携わっているのではないかと思う。そこで本著書を参考にぜひと
も「立体英語」をつかみとり、生徒にその魅力を伝え、生きた英語を楽しく自由に
操っていける人材を世に送り出して頂きたいと願うのである。
ちょっと堅苦しい解説になってしまったが、著作はとても面白くかかれているので是
非とも楽しんで読んで頂きたい。笑顔で楽しそうに外国人と思いのままのコミュニ
ケーションしている未来の自分を思い浮かべながら。
岩田了一 (京都市認定通訳ガイド)